投資においてバランス良くポートフォリオを組みたいと思った時に候補となる債券。
株に比べると相対的にリスクの低い債券ですが、債券の中でもリスクの高低はあり、「金利リスク」「信用リスク」によりコントロール可能です。
この記事では信用リスクを取ってリターンを狙いたい方向けに”iシェアーズ iBoxx 米ドル建てハイイールド社債 ETF”(HYG)をAGGと比較しながら見ていきます。
基本情報
HYG | AGG | |
運用会社 | ブラックロック | ブラックロック |
投資地域 | アメリカ | アメリカ |
設定日 | 2007年4月4日 | 2003年9月22日 |
投資対象 | 米国債券 | 米国投資適格債券 |
保有銘柄数 | 1302 | 9597 |
信託報酬 | 0.49% | 0.04% |
直近平均利回り | 4.85% | 2.25% |
標準偏差 | 8.59%(3年) | 3.51%(3年) |
配当 | 毎月 | 毎月 |
基準価額 | 87.93 | 115.09 |
※直近平均利回りは2020年1-12月総配当額を前年末株価で割った値
特徴的なのは投資対象です。
投資対象:名前の通り、ハイイールド(投資不適格)の債券に投資しています。債券ETFは、複数の信用格付けの商品を組み合わせてリスク・リターンのバランスを取りますが、このETFはかなり信用リスクが低いものもポートフォリオに組み込むことで、リターンを狙っています。
参考までに、米国債の利回りは以下の様になっています。
米国債2年:利回り0.15%
米国債5年:利回り0.81%
米国債10年:利回り1.3%
米国債30年:利回り2.34%
投資先格付け
どのくらい違うかAGGと比較してみます。
債券は通常BBB以上が”投資適格”であり、BB以下は”投資不適格”となります。
HYGはほとんどが投資不適格扱いで、BやCCCも40%近くあり、信用格付がかなり低いものも含まれています。
とはいえ信用格付けの低い社債への投資に比べると分散が効いている分、かなりリスクは低減出来ていると思います。
参考までにこの間発行された、ソフトバンク社債は格付けBBBです。
(参考記事:[年利2.75%(確定)]ソフトバンク発行のハイブリット債についてまとめました)
残存年数は5年未満のものが多く、平均は3.87年です。比較的短いようにも見えますが、信用格付けCCCでもかなり危険なことを考えると、全体としてはむしろ長く感じますね。
投資先
同様にAGGと比較してみます。
取り扱い銘柄数が多いこともあり、様々な業種に分散されています。信用格付が低いものばかりなので、国が発行する債券等はありません。
AGGは国が発行する債券が約65%を占めています。
この商品は信用リスクを取るという方針なので、これは想定どおりですね。
手数料
HYG:0.49%、AGG:0.04%
比較するとかなり高く見えます(AGGが低すぎるとも言える)
商品特性上、ハイリスク・ハイリターンを狙う商品ですので高すぎるという程ではないですね。
仮に1000万円分保有していたとすると、HYGの手数料は年額49,000円です。
配当額
2020年から過去10年の配当額の比較です。
HYG | AGG | |
2020年 | 4.85% | 2.25% |
2019年 | 5.41% | 2.86% |
2018年 | 5.15% | 2.65% |
2017年 | 5.16% | 2.35% |
2016年 | 5.66% | 2.40% |
2015年 | 5.31% | 2.41% |
2014年 | 5.49% | 2.48% |
2013年 | 6.07% | 2.23% |
2012年 | 6.89% | 2.97% |
2011年 | 7.44% | 3.30% |
平均 | 5.74% | 2.59% |
流石に高配当となっています。この水準であればかなり魅力的ではないでしょうか。
投資対象が債券と考えればかなり高いですが、後はどの程度値動きがあるか見ていきます。
値動き
まずは15年間の値動きを見てみます。
基本的なチャートの形は似ていますが、その振れ幅が相当に大きいという事が分かります。
次に単独で見てみます。
開始直後は$110程度ありましたが、最低では$67まで下がっており約40%も下落したこともあります。
通常、債券は長期金利と大きな相関関係にあります。金利の下落=債券価格の上昇となりますが、HYGは取り扱っているのがハイイールド債なため、金利だけでなく世界的な金融危機が発生しても大きな影響を受けます。
AGGのような総合債券ETFは暴落時でも値動きが少なく、金利動向を注視することが重要ですが、HYGはどちらにも目を向ける必要があるため取り扱いが難しいですね。
(債券と長期金利の関係については、米国金利と債券動向の関連性をまとめましたの記事に詳しくまとめていますので参考にしてください)
次にリーマンショック時の動きを見てみます。
暴落局面では大きな差が付くことが分かりますね。
次にコロナショック時の動きです。
こちらも同様の傾向ですね。
20-30%も値が振れる覚悟は必要です。
まとめ
改めて特徴をまとめると次のようになります。
・投資先の格付けは低い。信用リスクを取ることでリターンが狙える。
・高い配当金に加え、値動きによるインカムも狙える。
・金利との相関だけでなく市況にも結構な影響を受ける。
長期で見たときには右肩下がりという訳ではないため、値動きの粗さからも少しずつ積み立てればドルコスト平均法が効いて来ます。
債券の中だけで見ればハイリスク・ハイリターンな商品ですが、株を含めた金融商品全体で見ればそこまでではありません。分散も効いているので個別のハイイールド債(社債等)への投資に比べればリスクは相対的に低いと言えます。
ある程度リスクを取ってリターンを狙いたい人に取っては検討候補になる商品ではないでしょうか。
外国債券ETFの記事は他にもまとめていますので、次の記事も参考にしてみて下さい。
[年利2.25%]海外債券ETF代表格[AGG]は魅力が一杯!懸念点も正しく理解する
[年利:2.5%]海外債券ETFを買うなら[BND]?詳細をまとめました
[年利:2.54%]海外債券ETFを買うなら[SPAB]?詳細をまとめました