投資においてバランス良くポートフォリオを組みたいと思った時に候補となる債券。
海外投資先として第一に上がるのは米国ですが、米国だけに偏らせたくない・もっとリターンを求めたいという方もいると思います。
個別の国への債券投資はハイリスク・ハイリターンですが、複数国に分散しリスクコントロール出来るETFなら、新興国でもある程度リスクを抑えることが出来ます。
この記事では現地通貨建て新興国債券ETFであるLEMBと、ドル建て新興国債券ETFであるEMBを比較しながら見ていきます。
基本情報
LEMB | EMB | |
運用会社 | ブラックロック | ブラックロック |
投資地域 | 新興国 | 新興国 |
設定日 | 2011年10月18日 | 2007年12月17日 |
投資対象 | 新興国国債 | 新興国国債 |
保有銘柄数 | 283 | 576 |
信託報酬 | 0.30% | 0.39% |
直近平均利回り | 0.00% | 3.90% |
標準偏差 | 11.26%(3年) | 11.30%(3年) |
配当 | 毎月 | 毎月 |
基準価額 | 43.07 | 111.7 |
※直近平均利回りは2020年1-12月総配当額を前年末株価で割った値
系統が似た商品ではありますが、最も気になるのは利回りでしょう。
LEMBは2019年12月には1.927USDの配当があり、年末価格で計算すると4.28%の利回りとなりますが、2020年は配当無し。また過去も2015年8月~2018年12月まで無配であり、配当期待はしにくい商品となっています。
現地通貨建てとドル建ての違い
同じ運用会社が提供する商品で、新興国という表題も同じですが、その中身は大きく異なります。
最も大きい要素がこの現地通貨建てとドル建ての違いです。
ドル建て:新興国は信用が低いので自国通貨建てで債券を発行出来ません。世界最大の市場である米ドルであれば安心なため、「米国債の利回りに、新興国固有の信用リスク(信用スプレッド)が上乗せされる」ことで利回りが決まります。米国債の金利に注意が必要という事ですね。
新興国の中でドル建て国債を発行している国は約60ヵ国あるので、投資先が広がる事になります。
現地通貨建て:「投資対象国の債券利回り」で利回りが決まります。ただし「通貨の安定リスク」があります。
ドルのように安定していない所が多いため、変動幅が大きくなる可能性があります。
自国建て債券を発行出来るのは約20ヶ国と限られており、投資先も限られる事となります。
投資先格付け
通貨リスクが大きいので格付けは参考程度ですが、比較してみます。
債券は通常BBB以上が”投資適格”であり、BB以下は”投資不適格”となります。
自国で債券発行可能な国はある程度信用あること前提のため、投資不適格の割合も小さいです。
一方、ドル建てなら発行可能となると自国では信用がなく発行ができない国も含まれるため、投資不適格の割合も大きくなります。
LEMBは平均7.13年、EMBは平均13.61年です。
投資先
気になるLEMBの投資先です。
中国が新興国扱いなので、飛び抜けた数字になっています。
キャップ15%なので、1ヶ国は最大でも15%までとなっています。
次にEMBの投資先です。
ロシアやフィリピン・ドミニカ等、重なっている物もありますが、構成が大きく異なることが分かります。
中国は、中国単体の市場に投資出来る程の規模ですが、政府意向により値動きが大きいため、中々直接投資はしにくいと考えている方もいると思います。
その場合、中国も一定比率組み入れているETFは候補になります。
手数料
LEMB:0.30%、EMB:0.39%
米国総合債券であるAGGが0.04%であることを考えると高く見えますが、新興国が対象と考えれば十分ではないでしょうか。
新興国特定1ヶ国への投資はハイリスク・ハイリターンのため、分散投資してくれるETFの方がだいぶリスクは抑えられます。
配当額
2020年から過去9年の配当額の比較です。(LEMBは2011年10月開始の商品のため、10年分の値無しのため)
LEMB | EMB | |
2020年 | 0.00% | 3.91% |
2019年 | 4.39% | 4.54% |
2018年 | 3.49% | 5.68% |
2017年 | 0.00% | 4.56% |
2016年 | 0.00% | 4.84% |
2015年 | 0.64% | 4.85% |
2014年 | 2.88% | 4.55% |
2013年 | 2.99% | 4.77% |
2012年 | 3.50% | 4.21% |
平均 | 1.99% | 4.66% |
リスクの高い新興国に、現地通貨建てでこの利回りはかなり低いです。
配当0の期間がそれなりにあるため、配当狙いというのは厳しいのが分かります。
値動き
まずは9年間の値動きを比較しながら見てみます。
チャートの形はある程度似通った物になりますが、どの時期を見てもLEMBの方がパフォーマンスが低くなっています。
次に単独で見てみます。
債券ETFにしては値動きが大きいですが、為替影響も受ける海外ETFは、手数料が高く付くため頻繁に売却しにくいです。
値も緩やかに右肩下がりであるため、長期保有もしにくい状況です。
長期で見た時に新興国全体の成長を信じて値が回復する事を期待するとしても、ある程度の配当が期待出来るEMBの方が良いですね。
まとめ
改めて特徴をまとめると次のようになります。
・新興国債券に分散投資出来るETF。
・現地通貨建てである(ドル建てでは無い)。
・配当期待はしにくい。
長期で見たときには緩やかに右肩下がりであり、EMBと比較した時に良い点が少ないです。
ドルの通貨としての価値が揺らいで来たときには、現地通貨建ての魅力も増していくと思いますが、現状はリスクの割にはリターンが少なく、中々手が出しにくい商品ではないでしょうか。
この銘柄はブラックロックが提供している商品ですが、ライバルであるステート・ストリートが提供している、EBNDという商品もあります。
こちらは別途記事にする予定です。