投資においてバランス良くポートフォリオを組みたいと思った時に候補となる債券。
株に比べると相対的にリスクの低い債券ですが、債券の中でもリスクの高低はあり、「金利リスク」「信用リスク」によりコントロール可能です。
この記事で紹介するIEFは長期債券に投資し、信用リスクを抑えつつ金利リスクを取る商品ですが、注意点もありますので、それも含めてまとめていきます。
差を見るため、”iシェアーズ 米国国債 7-10年 ETF(IEF)と、総合債券ETFであるAGGを比較しながら見ていきます。
基本情報
IEF | AGG | |
運用会社 | ブラックロック | ブラックロック |
投資地域 | アメリカ | アメリカ |
設定日 | 2002年7月22日 | 2003年9月22日 |
投資対象 | 米国債 | 米国投資適格債券 |
保有銘柄数 | 13 | 9597 |
信託報酬 | 0.15% | 0.04% |
直近平均 利回り(※) | 1.08% | 2.25% |
標準偏差 | 5.61%(3年) | 3.51%(3年) |
配当 | 毎月 | 毎月 |
基準価額 | 116.93 | 114.55 |
※直近平均利回りは2020年1-12月総配当額を前年末株価で割った値
特徴的なのは標準偏差です。
投資対象が長期国債に限定されており、ある程度値動きは大きくなる傾向にあります。
投資先格付け
IEFは米国債しか対象にしていないのですが、どのくらい違うかAGGと比較してみます。

IEFは投資対象が米国債だけなので、AAAが100%となっています。
投資対象は残存期間7年超10年以下の物に限っており、平均残存時間(運用期間)は8.54年です。
参考まで比較対象のAGGは、格付けAAAの物が70%、平均残存時間は8.1年ですが、そのうち5年未満が50%となっており、比較的短期のものに寄せています。
投資先
こちらも非常にシンプルですが、同様にAGGと比較してみます。


AGGも国が発行する債券(財務省+モーゲージパススルー証券)の割合が65%を占め、非常に安定的であることが分かりますが、IEFはすべて政府債券なので、投資先信頼度はIEFが上となります。
手数料
IEF:0.15%、AGG:0.04%
保有銘柄はIEFが13、AGGが1万弱と、これだけ見るとAGGの方が高くならないとおかしく見えますが、AGGは債券ETFの看板商品でもあり、手数料競争が厳しい事も影響しているかもしれません。
仮に1000万円分保有していたとすると、IEFの手数料は年額15,000円です。
配当利率
2020年から過去10年の配当利率の比較です。
IEF | AGG | |
2020年 | 1.08% | 2.25% |
2019年 | 2.07% | 2.86% |
2018年 | 2.25% | 2.65% |
2017年 | 1.82% | 2.35% |
2016年 | 1.82% | 2.40% |
2015年 | 1.90% | 2.41% |
2014年 | 2.06% | 2.48% |
2013年 | 1.77% | 2.23% |
2012年 | 1.78% | 2.97% |
2011年 | 2.56% | 3.30% |
平均 | 1.91% | 2.59% |
全体的に総合債券ETFであるAGGに勝っている年は無く、手数料が0.15%とAGGよりも高いため、配当期待はしにくいです。
値動き期待しつつ、配当もそこそこを狙うという戦略になりそうです。
値動き
まずは15年間の値動きを見てみます。

IEFは金利リスクを取っている分、債券ETFの中では値動きは大きい方です。値動きの大きさこそ違うものの、チャートの波形はAGGと似通っていることが分かります。
投資先の信用リスクが低ければ、あとはどのくらいの値動きを許容するか(金利リスクを取るか)で銘柄を選ぶ形ですね。
同じように金利リスクを取っているTLTとも比較してみます。
(TLTの記事は海外債券ETFでもリターンを狙うなら[TLT]?詳細をまとめました を参照)

チャートの波形は似通っており、より値動きが大きいことが分かります。
IEF単体でも見てみます。

$80-$120の中で動いており、50%程度変動しています。債券ETFの中では値動きが大きい方ですね。
大きな転換点としては2007年6末頃と、2018年10月頃で、米国10年金利が大きく動いたタイミングです。
債券は長期金利と密接な関係にあるため、このあたりは「米国金利と債券動向の関連性をまとめました」の記事を参照ください。
一応暴落時の動きも見てみます、まずはリーマンショック時です。

株は暴落していた時期ですが、影響は特に受けていません。長期金利が低下していた時期であるため、債券価格は上がりやすく、短期債券から長期債券に乗り換える動きが出てくるためIEFやTLTは値が上がりやすくなります。次にコロナショック時です。

こちらも同様の動きですね。
投資タイミングに注意
世界的に安定している米国債を対象にしているので信用リスクはありません。長期債が対象なので金利リスクは大きく、そこそこの値動きがあるIEF。そこでの判断基準は金利になります。
金利と債券は相関関係にありますので、シンプルなルールに従えば次のようになります。
・金利が大きく上昇している局面では、長期債券は売られやすい。
・同様に、金利上昇局面では長期債券から短期債券に乗り換える動きが出てくる。
実際に20年超の米国債を対象にするTLTのような長期債券はこの一年の急激な金利上昇で大きく値を下げており、値動きの幅こそ違うもののIEFも下げています。
これから「米国の長期金利は上がる」と見るならIEFは下げていくと思われます。
ですが、逆に言えば仕込み時となりますので、短期的な値下げを気にせず次の長期金利転換サイクルまで待てる方であれば、選択肢の一つになると思います。
まとめ
改めて特徴をまとめると次のようになります。
・投資先の格付けは最高レベルで不安無し
・金利リスクは長期なので取ることになる。
・暴落に巻き込まれるリスクは少ない。
・値動きは、債券ETFの中では比較的多い。
長期金利はこの1年大きく上昇しましたが、2021年7月現在で直近2-3ヶ月を見ると急下降している状況です。
コロナ影響による米国の景気動向が見えてくるともう少し方向性が見えるようになってくると思いますが、投資するにあたっての判断基準は、やはり米国の長期金利動向次第ということになります。
「これから長期金利は上がっていく」「次の長期金利転換サイクルまで待てる」と考える方にとっては選択肢の一つに成り得ると思います。
米国債券ETFの記事は他にもまとめていますので、次の記事も参考にしてみて下さい。
[年利2.25%]海外債券ETF代表格[AGG]は魅力が一杯!懸念点も正しく理解する
[年利:2.5%]海外債券ETFを買うなら[BND]?詳細をまとめました
[年利:2.54%]海外債券ETFを買うなら[SPAB]?詳細をまとめました
海外債券ETFでもリターンを狙うなら[TLT]?詳細をまとめました
値動き無しで安定だが、投資タイミングは注意が必要。海外債券ETF[SHV]をまとめました