投資においてバランス良くポートフォリオを組みたいと思った時に候補となる債券。
海外投資先として第一に上がるのは米国ですが、米国だけに偏らせたくない・もっとリターンを求めたいという方もいると思います。
個別国債券への投資はハイリスク・ハイリターンですが、複数国に分散しリスクコントロール出来るETFならリスクを抑えることが出来ます。
この記事では新興国債券ETFであるEMBと、米国ハイイールド社債ファンドであるHYGを比較しながら見ていきます。
基本情報
EMB | HYG | |
運用会社 | ブラックロック | ブラックロック |
投資地域 | 新興国 | アメリカ |
設定日 | 2007年12月17日 | 2007年4月4日 |
投資対象 | 新興国国債 | 米国ハイイールド社債 |
保有銘柄数 | 576 | 1302 |
信託報酬 | 0.39% | 0.49% |
直近平均利回り | 3.90% | 4.85% |
標準偏差 | 11.30%(3年) | 8.59%(3年) |
配当 | 毎月 | 毎月 |
基準価額 | 111.7 | 87.39 |
※直近平均利回りは2020年1-12月総配当額を前年末株価で割った値
HYGはハイイールド(ジャンク)債が対象、EMBは国債が対象ですが、HYGより標準偏差が高く値動きが荒いことが分かります。それだけ新興国投資にリスクがあるという事ですね。
逆に個別国のリスクを見極めるのがそれだけ難しいという事ですから、各国分散してくれるETFは有り難いのでは無いでしょうか。
投資先格付け
国と会社なので格付けの基準も異なるとは思いますが参考までに比較してみます。
債券は通常BBB以上が”投資適格”であり、BB以下は”投資不適格”となります。
HYGはほとんどが投資不適格扱いで、BやCCC合計で40%近くあり、信用格付がかなり低いものも含まれています。
一方、EMBは思ったよりは低くない印象で、ある程度バランスを取っているのが見て取れます。
残存期間は長い物が多く平均13.61年です。
投資先
気になる投資先です。
最も割合が大きい物でも5%を切っており、上位10国の合計値は33%と、特定の国の影響を受けないような構成になっています。
新興国投資において最も大きなリスクは政治・経済・戦争といった要因による不安定さでしょう。
先進国は順調だったとしても新興国はその限りではありません。このリスクを極力避けるにはとにかく分散するしか無く、この構成になっているのも納得です。
手数料
EMB:0.39%、HYG:0.49%
EMBはこれだけの国に分散していると考えれば決して高くは無いと思います。
米国債券と比べると高く見えますが、新興国が対象とすれば十分ではないでしょうか。
配当額
2020年から過去10年の配当額の比較です。
EMB | HYG | |
2020年 | 3.91% | 4.85% |
2019年 | 4.54% | 5.41% |
2018年 | 5.68% | 5.15% |
2017年 | 4.56% | 5.16% |
2016年 | 4.84% | 5.66% |
2015年 | 4.85% | 5.31% |
2014年 | 4.55% | 5.49% |
2013年 | 4.77% | 6.07% |
2012年 | 4.21% | 6.89% |
2011年 | 4.90% | 7.44% |
平均 | 4.68% | 5.74% |
HYGと比べると1%程度差が出ていますが、国債と格付けの低い企業との比較ですので、破綻リスクがどちらが高いか考えれば十分ではないかと思います。
EMB単独で見た時も、債券なのに米国高配当株程度の配当が期待出来ます。
値動き
まずは15年間の値動きを見てみます。
リーマンショックやコロナショックで大きく下がっているのは共通ですが、戻りの大きさではEMBが勝っています。
次に単独で見てみます。
ある程度は波打っている物の、全体を見ると緩やかに右肩上がりから横ばい程度でしょうか。
長期で見た時に新興国全体の成長を信じられるのであれば、多少値が下がっても配当を受け取りながら復活を待てると思います。
次にリーマンショック時の動きを見てみます。
波形は似通っていますが、戻りの速さは差が付いています。
これだけ大きな金融危機が訪れた時は、債券といえどこの程度の値動きはあると覚悟しておく必要があります。
次にコロナショック時の動きです。
こちらも同様の傾向ですね。
まとめ
改めて特徴をまとめると次のようになります。
・新興国債券に分散投資出来るETF。格付けは低いところも含まれる。
・保有先は最も高い比率でも5%未満、特定の国の影響を受けないようになっている。
・金融危機発生時には大きく値が動く事もある、戻りは早め。
長期で見たときには緩やかな右肩上がり、または横ばいなので、値動きの粗さからも少しずつ積み立てればドルコスト平均法が効いて来ます。
債券の中だけで見ればハイリスク・ハイリターンな商品ですが、株を含めた金融商品全体で見ればそこまでではありません。分散も効いているので個別国債券を購入するのに比べたら遥かにリスクを抑える事が出来るでしょう。
新興国にも投資したいけど、個別国向けの投資や、新興国株式はリスクが高すぎると感じている方に取っては検討候補になる商品ではないでしょうか。
この銘柄はブラックロックが提供している商品ですが、ライバルであるバンガードが提供している、VWOBという商品もあります。
そして、現時点ではVWOBの方がパフォーマンスは優れています。
比較記事をまとめていますので参考にして見て下さい。