投資においてバランス良くポートフォリオを組みたいと思った時に候補となる債券。
株に比べると相対的にリスクの低い債券ですが、債券の中でもリスクの高低はあり、「金利リスク」「信用リスク」によりコントロール可能です。
この記事で紹介するSHVはどちらのリスクも取らない、最も低リスクな商品ですが、注意点もありますので、それも含めてまとめていきます。
差を見るため、”iシェアーズ米国短期国債ETF”(SHV)と、総合債券ETFであるAGGを比較しながら見ていきます。
基本情報
SHV | AGG | |
運用会社 | ブラックロック | ブラックロック |
投資地域 | アメリカ | アメリカ |
設定日 | 2007年1月5日 | 2003年9月22日 |
投資対象 | 米国債 | 米国投資適格債券 |
保有銘柄数 | 37 | 9597 |
信託報酬 | 0.15% | 0.04% |
直近平均 利回り(※) | 0.74% | 2.25% |
標準偏差 | 0.4%(3年) | 3.51%(3年) |
配当 | 毎月 | 毎月 |
基準価額 | 110.48 | 114.55 |
※直近平均利回りは2020年1-12月総配当額を前年末株価で割った値
特徴的なのは標準偏差です。
投資対象が1年未満の国債に限定されており、金利の影響を受けないため、とても安定した値動きになります。リスクをほとんど取らず、利回りは低い、典型的なローリスク・ローリターンの商品です。
投資先格付け
SHVは米国債しか対象にしていないのですが、どのくらい違うかAGGと比較してみます。
SHVで気になるのは「キャッシュ・デリバティブ等」ですが、内容を見ると「TREASURY BILL」となっています。これは米国財務省短期証券で、米国政府が発行する償還期限が1年以内の割引債の総称です。つまり政府が発行する債券なので、実質AAAがほぼ100%ですね。
投資対象は1年未満の物に限っており、平均残存時間(運用期間)は0.42年です。
参考まで比較対象のAGGは、格付けAAAの物が70%、平均残存時間は8.1年、そのうち5年未満が50%となっており、こちらも比較的短期ですが、SHVがいかに短期・安定に寄せているかが分かります。
投資先
こちらも非常にシンプルですが、同様にAGGと比較してみます。
AGGも国が発行する債券(財務省+モーゲージパススルー証券)の割合が65%を占め、非常に安定的であることが分かりますが、SHVはすべて政府債券なので、投資先信頼度はSHVが上となります。
手数料
SHV:0.15%、AGG:0.04%
保有銘柄はTLTが37、AGGが1万弱と、これだけ見るとAGGの方が高くならないとおかしく見えますが、AGGは債券ETFの看板商品でもあり、手数料競争が厳しい事も影響しているかもしれません。
仮に1000万円分保有していたとすると、SHVの手数料は年額15,000円です。
配当額
2020年から過去10年の配当額の比較です。
SHV | AGG | |
2020年 | 0.742% | 2.25% |
2019年 | 2.190% | 2.86% |
2018年 | 1.657% | 2.65% |
2017年 | 0.725% | 2.35% |
2016年 | 0.338% | 2.40% |
2015年 | 0.031% | 2.41% |
2014年 | 0.001% | 2.48% |
2013年 | 0.004% | 2.23% |
2012年 | 0.006% | 2.97% |
2011年 | 0.075% | 3.30% |
平均 | 0.577% | 2.59% |
極端に配当が少ない年があるため、桁を一つ増やしています。
手数料が0.15%なので、持っているだけで赤字になっている年も結構あります。長期的な目線で見れば損はしにくいでしょうが、配当目当てとしては厳しいと思います。
値動き
まずは15年間の値動きを見てみます。
AGGも動きがかなり少ない方ですが、比較するとSHVは全く動いていないように見えます。SHV単体でも見てみます。
グラフで見ると多少波があるように見えますが、実際には$109-$111の中での動きであり、14年で$2しか動いていないです。また殆どの期間は$110.2近辺に張り付いていて、値動きは全くない銘柄で有ることが分かります。
一応暴落時の動きも見てみます、まずはリーマンショック時です。
全く動きはありません。次にコロナショック時です。
こちらも全く値動きはありません。
投資タイミングに注意
世界的に安定している米国債を対象にしているので信用リスクは無い。また、短期債が対象なので、金利リスクも無い。利回りは高くは無いが、0.1%も利息が付かない定期預金に比べたら利回りは高いと言える(外貨預金についての考察は、外貨預金は投資対象になる?まとめましたの記事を参照下さい)、ローリスク・ローリターン商品の典型例です。
では「積極的な投資はしたくない」人向けに、すぐおすすめ出来るかというと、そうでもありません。為替の影響を大きく受ける商品のため、投資タイミングには注意が必要です。
ドルだけで運用している人にとってはローリスク・ローリターンな商品でも、日本円から運用しようとすると為替影響を受ける時点である程度のリスクは乗ってきます。
米国債券であるため、購入するには円→ドルへ転換する必要があり、それは他の米国債券ETFでも条件は同じですが、他の米国債ETFは一定の利率を期待できるので、極端な為替の動きがあった時にも配当を受け取りながら為替が戻るのを待つ事が出来るし、値動きによる差益も狙えます。状況により配当+差益と差損のバランスを見て損切りすることも出来ます。
一方でSHVは値動きがほぼ無い銘柄なので、値上がりによる差益は期待出来ません。配当も大きくは期待出来ないので、購入や維持に掛かる手数料の方が大きくなる可能性もあります。
となると、結局は「円高の時に買って、円安を待つ」という外貨預金のような運用になると思われ、円高タイミングを待ってから投資することになります。(とは言えメリットがほとんど無い外貨預金を選ぶくらいなら、SHVを選んだ方が良いです)
まとめ
改めて特徴をまとめると次のようになります。
・投資先の格付けは最高レベルで不安無し
・金利リスクも短期なので取らない。
・値動きは、ほとんど無い。
・総じてローリスク・ローリターンな商品
・購入にはタイミングが重要
2021年6月現在、円高とは言いにくい水準なので、すぐにおすすめ出来る商品ではありませんが、将来円高になった時には「ローリスク・ローリターン商品」として検討に入れて見ても良いと思われるため、覚えておいて損は無い商品だと思います。
外国債券の記事は他にもまとめていますので、次の記事も参考にしてみて下さい。
[年利2.25%]海外債券ETF代表格[AGG]は魅力が一杯!懸念点も正しく理解する
[年利:2.5%]海外債券ETFを買うなら[BND]?詳細をまとめました