投資においてバランス良くポートフォリオを組みたいと思った時に候補となる債券。
株に比べると相対的にリスクの低い債券ですが、債券の中でもリスクの高低はあり、「金利リスク」「信用リスク」によりコントロール可能です。
この記事では金利リスクを取ってリターンを狙いたい方向けに”iシェアーズ 米国国債 20年超 ETF”(TLT)をAGGと比較しながら見ていきます。
基本情報
TLT | AGG | |
運用会社 | ブラックロック | ブラックロック |
投資地域 | アメリカ | アメリカ |
設定日 | 2002年7月22日 | 2003年9月22日 |
投資対象 | 米国債 | 米国投資適格債券 |
保有銘柄数 | 34 | 9597 |
信託報酬 | 0.15% | 0.04% |
直近平均利回り | 1.50% | 2.25% |
標準偏差 | 13.72%(3年) | 3.51%(3年) |
配当 | 毎月 | 毎月 |
基準価額 | 139.74 | 114.55 |
※直近平均利回りは2020年1-12月総配当額を前年末株価で割った値
特徴的なのは投資対象と、利回り+標準偏差です。
投資対象:名前の通り、20年超の米国債のみに投資しており、投資対象としての信頼度はこれ以上無いほど高いです。債券ETFは、複数の信用格付けの商品を組み合わせてリスク・リターンのバランスを取りますが、このETFは安定した信用格付を確約し、その代わりに長期債の特徴である金利リスクを取ることでリターンを狙っています。
参考までに、米国債の利回りは以下の様になっています。
米国債2年:利回り0.15%
米国債5年:利回り0.81%
米国債10年:利回り1.3%
米国債30年:利回り2.34%
標準偏差:13.72%もあります。
これは1年間で13.72%も値の変動があるという事になり、AGGの3.5%と比較してかなり大きな値動きであることが分かります。株と債券を組み合わせたポートフォリオを構築するときは、値動きが少ない債券を選定することが多いと思いますが、株はやはり変動が大きくリスクも大きいため、それほどリスクは取りたくない時には、このような「値動きのそこそこ大きい債券」というのが選択肢に入ってくると思います。
投資先格付け
TLTは米国債しか対象にしていないのですが、どのくらい違うかAGGと比較してみます。
AGGはAAAの物が70%、平均残存時間(運用期間)は8.1年、そのうち5年未満が50%となっており比較的短期ですが、TLTはAAA格付けのものが平均26年であることからも、商品構成としては非常に分かりやすくなっています。
投資先
こちらも非常にシンプルですが、同様にAGGと比較してみます。
AGGも国が発行する債券(財務省+モーゲージパススルー証券)の割合が65%を占め、非常に安定的であることが分かりますが、投資先信頼度はTLTが上となります。
手数料
TLT:0.15%、AGG:0.04%
保有銘柄はTLTが34、AGGが1万弱と、これだけ見るとAGGの方が高くならないとおかしく見えますが、AGGは債券ETFの看板商品でもあり、手数料競争が厳しい事も影響しているかもしれません。
仮に1000万円分保有していたとすると、TLTの手数料は年額15,000円です。
配当額
2020年から過去10年の配当額の比較です。
TLT | AGG | |
2020年 | 1.50% | 2.25% |
2019年 | 2.26% | 2.86% |
2018年 | 2.64% | 2.65% |
2017年 | 2.44% | 2.35% |
2016年 | 2.60% | 2.40% |
2015年 | 2.61% | 2.41% |
2014年 | 2.67% | 2.48% |
2013年 | 3.24% | 2.23% |
2012年 | 2.66% | 2.97% |
2011年 | 3.30% | 3.30% |
平均 | 2.59% | 2.59% |
バラつきは大きいですが、直近10年の平均でみると同程度です。
TLTは2020年が低くなっていますが、これは基準価額が上昇したことにより低く見えています。
値動き
まずは15年間の値動きを見てみます。
AGGは動きが少ないですが、TLTは大きく振れていることが分かります。
とくに直近1年で大きく値を下げているため、この部分を拡大して見てみます。
2020年8月は171.57、2021年6月は141.55で18%も下落しています。
2020年8月は長期金利が歴史的な低水準だったタイミングであり、そこからの利回り上昇に大きく影響を受けています。このまま上がり続けるかと思われていた長期金利は2021年6月現在、一旦停滞していますが、TLTは不安から大きく売られたと思われます。
債券と長期金利の関係については、米国金利と債券動向の関連性をまとめましたの記事に詳しくまとめていますので参考にしてください。
次にリーマンショック時の動きを見てみます。
危機発生時は、安全資産への逃避から値が上がっていることが分かります。AGGは狭い範囲で株と似た動きをしますが、値動きが少ないので影響は少なく、TLTは株とは逆に値が上がる動きとなっており、いずれも暴落局面では強い銘柄となっています。
次にコロナショック時の動きです。
こちらも同様の傾向で上げています。
まとめ
改めて特徴をまとめると次のようになります。
・投資先の格付けは最高レベルで不安無し
・金利リスクを取ることでリターンが狙える
・債券の中では値動きの幅が大きい
この一年で大きく値を下げており、また今後も米国インフレが懸念により、まだ下がっていく可能性もあります。一方、次の10年を見越してそろそろ仕込み始めるという戦略はありかと思います。