投資においてバランス良くポートフォリオを組みたいと思った時に候補となる債券。
海外投資先として第一に上がるのは米国ですが、米国だけに偏らせたくない・もっとリターンを求めたいという方もいると思います。
個別国債券への投資はハイリスク・ハイリターンですが、複数国に分散しリスクコントロール出来るETFならリスクを抑えることが出来ます。
この記事では新興国債券ETFであるVWOB(バンガード社提供)と、同じく新興国債券ETFのEMB(ブラックロック社提供)を比較しながら見ていきます。
基本情報
VWOB | EMB | |
運用会社 | バンガード | ブラックロック |
投資地域 | 新興国 | 新興国 |
設定日 | 2013年5月31日 | 2007年12月17日 |
投資対象 | 新興国国債 | 新興国国債 |
保有銘柄数 | 737 | 576 |
信託報酬 | 0.25% | 0.39% |
直近平均利回り | 4.18% | 3.90% |
標準偏差 | 10.36%(3年) | 11.30%(3年) |
配当 | 毎月 | 毎月 |
基準価額 | 79.62 | 111.7 |
※直近平均利回りは2020年1-12月総配当額を前年末株価で割った値
VWOBは比較的新しいETFで長期間の実績はまだ溜まっていません。
一口に新興国債券と言っても投資先の国や保有比率は大きく異なるので、中身を見て判断していく必要はありますが、やはり経費率の差は目立ちます。
投資先格付け
サマリーで開示されている情報に差があるのでBB以下の割合が比較出来ませんが、AA~BBBまでの割合は似通っています。
残存期間も表現が異なりますが、単位をあわせて比較すると似通った数値になります。
VWOB、EMB共に平均13.61年で、ここまでは大きな差がありません。
投資先
気になる投資先です。これが最もEMBとの違いが出るところです。
まずVWOBの投資先TOP10です。
特徴的なのは5%以上の比率で保有している物が複数有ること、特にメキシコは10%近くとなっています。
TOP10の合計値は58.3%です。
次にEMBの投資先TOP10です。
最も割合が大きい物でも5%を切っており、上位10国の合計値は33%です。
こちらの方が、より特定の国の影響を受けないような構成になっています。
新興国投資において最も大きなリスクは政治・経済・戦争といった要因による不安定さでしょう。
どの国を選ぶのが最適かを見極めるのは非常に困難ですが、方針に違いは見られるので、どちらの方が自分の投資方針に合っているかで選ぶ形になると思います。
手数料
VWOB:0.25%、EMB:0.39%
バンガードはブラックロックをベンチマークに手数料を決めていると思われますが、この2つは結構差があります。
(総合債券ETFであるBND(バンガード)とAGG(ブラックロック)の場合は0.035%対0.04%なので、力の入れ具合にも差が見えます)
これだけの国に分散していると考えれば、手数料は決して高くは無いと思います。
配当額
2020年から過去4年の配当額の比較です。
VWOB | EMB | |
2020年 | 4.18% | 3.91% |
2019年 | 4.58% | 4.54% |
2018年 | 4.49% | 5.68% |
2017年 | 4.61% | 4.56% |
平均 | 4.46% | 4.67% |
取得出来た情報が直近5年だけ、かつ2021年は途中なので、確定分だけの比較になります。
その他のハイイールド債券と比べると1%程度低くなっていますが、国債と格付けの低い企業との比較ですので、破綻リスクがどちらが高いか考えれば十分ではないかと思います。
VWOB単独で見た時も、債券なのに米国高配当株程度の配当が期待出来ます。
値動き
VWOB開始時点からの値動きを比較してみます。
投資している国がこれだけ違っても値動きは非常に似通っています。
全体的にVWOBの方がパフォーマンスが良いですね。
次にVWOB単独で見てみます。
2020年3月のコロナショック時は例外としても、それ以外の期間でもそこそこに値動きは大きくなっています。
リーマンショック時はまだこの商品が無かったので、コロナショック時を拡大して見てみます。
この期間で見ると最大で23%近く下落しています。これくらいの下落はあると考えておいた方が良いでしょう。
ただ9ヶ月で元値に戻っており戻りは早いです。
まとめ
改めて特徴をまとめると次のようになります。
・新興国債券に分散投資出来るETF。格付けは低いところも含まれる。
・保有先は多岐に渡るが、EMBと比較すると特定国への偏りあり。
・EMBより手数料が安い、しかし現在までの値動きはEMBと殆ど変わらず。
・金融危機発生時には大きく値が動く事もある、戻りは早め。
値動きはある程度大きいですが、少しずつ積み立てればドルコスト平均法が効いて来ます。
債券の中だけで見ればハイリスク・ハイリターンな商品ですが、株を含めた金融商品全体で見ればそこまでではありません。分散も効いているので個別国債券を購入するのに比べたら遥かにリスクを抑える事が出来るでしょう。
新興国にも投資したいけど、個別国向けの投資や、新興国株式はリスクが高すぎると感じている方に取っては検討候補になる商品ではないでしょうか。
まだ歴史が浅い商品とは言え、パフォーマンス面で見ても、手数料面で見てもライバルのEMBを上回っており、現時点ではVWOBの方が優位です。
比較検討用にEMBの記事も見てみてください。