2023年4月28日に発行される「ソフトバンクグループ株式会社 第6回利払繰延条項・期限前償還条項付無担保社債(劣後特約付)」が色々気になるところが多いので、まとめてみました。
(SBI証券の募集ページはこちら)
似た条件で発行された、第5回(前回)の記事はこちらです。
基本情報
確定後情報
※条件確定しましたので情報を追記します(4/15)
4.75%となりました。円貨建債券としては最高峰の利率で、過去の社債一覧と比較しても、ソフトバンクの個人向け・円建て社債としては過去最高利率ではないでしょうか。
確定前情報の中間値である4.60%も上回っています。
利率(確定):
1.当初5年固定利率 年4.75%(税引前)
2. 5年後以降※1 1年国債金利※2+4.84%※3
3. 20年後以降※2 1年国債金利※3+4.89%※3
4. 25年後以降※2 1年国債金利※3+5.59%※3
※1 5年後以降の利率は1年毎に改定される。
※2 「1年国債金利」とは、利率基準日(改定後利率適用期間の開始日の2銀行営業日前の日)のレートとして財務省ウェブサイト内 「国債金利情報」ページの「金利情報」(その承継ファイルおよび承継ページを含む。)に表示される1年国債金利のこと。
※3 当初スプレッド4.59%(当初5年固定利率 – 5年国債流通利回り)に各期間の上乗せ幅(5年後以降0.25%、20年後以降0.30%、25年後以降1.00%)を加算した利率です。
(参考:確定前情報)
商品名:ソフトバンクグループ株式会社 第6回利払繰延条項・期限前償還条項付無担保社債(劣後特約付)
発行体:ソフトバンクグループ株式会社
債券予備格付:BBB(JCR)
利率(仮条件):
1.当初5年固定利率※1 年4.10%~年5.10%(税引前)
2. 5年後以降※2 1年国債金利※3+当初スプレッド※1+0.25%
3. 20年後以降※2 1年国債金利※3+当初スプレッド※1+0.30%
4. 25年後以降※2 1年国債金利※3+当初スプレッド※1+1.00%
※1 「1.当初5年固定利率」及び「当初スプレッド」は、条件決定日(2023/4/14(木))に決定。
※2 5年後以降の利率は1年毎に改定される。
※3 「1年国債金利」とは、利率基準日(改定後利率適用期間の開始日の2銀行営業日前の日)のレートとして財務省ウェブサイト内 「国債金利情報」ページの「金利情報」(その承継ファイルおよび承継ページを含む。)に表示される1年国債金利のこと。
利払日:毎年 4/28および10/28、初回:2023/10/28
申し込み単位(額面):100万円以上、100万円単位
申し込み期間(予定):4/17(木)12:00 ~ 4/27(木)14:00
期間:約35年
利率以外は前回の第5回と条件は全く同じです。
相当長い商品名であるため、一体どういう特徴があるのか、ひとつずつ見ていきます。
①利払繰延条項
説明:“発行体の裁量で利息の支払いを繰り延べることができる、あるいは証券によっては一定の事象が発生した場合に利息の支払いを繰り延べなければならない条項。
極端に発行体の財務状況が悪化した場合等は発行体の任意で利払金が支払われないことがありますが、支払われなかった利払金は、次回以降に合算して支払われます”
今回の場合はソフトバンクの財務状況が悪化した場合、利払金が払われない場合がある、ということです。
②期限前償還条項
説明:“債券が満期前に償還すること。
早期償還条項には、発行体の任意によって全部または一部が償還されるものと、あらかじめ条件を定めその条件を満たした場合に償還されるものがある。”
今回は初回繰上償還可能日以降の各利払日に償還出来る様になっているようです。
つまり半年に一回、可能性があるということですね。
これはかなり企業側に有利な設定と思いました。
高い利率を期待出来るなら、投資する側としては預けっぱなしにして利息を貰いたい所です。
ただ、市況を見て企業側が都合の良い方向に調整出来ると言うことになります。
これを金利の状況から見てみると次のようになります。
金利の上昇局面:本来、お金を借りるのに高い金利になるはずなので、発行側が債券を期限前償還しません。投資側からすると、他に資金移動出来れば利益が狙える局面でも我慢することになります。
金利の下落局面:発行側からすると、もっと安い金利でお金を借りる事が出来ます。それであれば債券を買い取って(償還して)しまって、別のところから借りれば良い、となります。
投資側は保持して高い利息を受け取りたい所ですが、選択権は発行側にあります。
③無担保社債
説明:“元利金の支払いや償還を保証するための特別な担保を付けずに発行される債券のこと”
特別担保が付く機会は少ないようなので、これは普通の設定ということになります。
④劣後特約付
説明:“社債は企業が破綻しないかぎり、満期までは一定の利子がつき、満期を迎えると、元本が払い戻しされますが、この破綻したときに弁済順位が低いのが「劣後債」です”
弁済順番としては、「普通社債 > 劣後債 > 優先出資証券 > 普通株式」なので、破綻した時に返ってくる確率が下がる代わりに、高金利ということですね。
①でもありましたが、ソフトバンクの破綻可能性がそのままリスクになります。
ちなみに注意書きに「「上位債務」とは、同順位劣後債務に関する当社の債務を除く、劣後債務(2021 年9月 16 日発行の第4回無担保社債(劣後特約付)、2021年9月30日発行の第3回無担保社債(劣後特約付)及び 2022年2月4日発行の第5回無担保社債(劣後特約付)に関する当社の債務を含む。)を含むあらゆる当社の債務をいいます
」とあるので、劣後債の中でも順番として4番目になります。
2021年9月16日発行分:2028年9月15日償還で500億
2021年9月30日発行分:2028年9月29日償還で4500億
2022年2月4日発行分:2029年2月2日償還で5500億
合計で1兆500億分を返済した後に本債券の返還が始まる訳で、結構順位が後ろの方だな、という認識で良いと思います。
⑤期間
第5回同様、驚きの35年です
②で説明した通り、発行側がある程度償還時期をコントロール出来るので、途中での償還が前提?と見ておいた方が良いでしょうか。流石に35年間状況が変わらないということは無いと思います。
⑥利率
これが一番重要ですね。これまでの項目だと良いところがほとんど無いのは、それだけリターンが高いことの裏返しのはずです。
1.当初5年固定利率: 年4.75%(税引前)
これは文句なしに債券としては高利回りですね。ETFと違い価格変動は無いため、この部分は非常にお得になっています。
2. 5年後以降: 1年国債金利+4.84%
5年後以降は1年ごとに利率改定となっています。
1年国債金利は財務省のこちらから参照出来る金利になる、とのことです
3. 20年後以降: 1年国債金利+4.89%
考え方は同じで、最後のボーナス利率だけが違います。
4. 25年後以降: 1年国債金利+5.59%
ここまで来ると利率もかなり高くなってきますが、25年は遥か先の事なので、覚えているかどうか。
その時の情勢がどうなっているか分かりません。ここまで償還されない可能性はあるのでしょうか?
なお、償還されるかどうかは、その時まで分かりません。
事前に予告は無いと思うので、いつ償還されるか気にすることになります。
また、売却したい場合でも市場価格での売却となり、損をする可能性があることもリスクです。
過去のソフトバンク債券参考
今回はタイトルにある通り、「第6回」です。過去の1-5回はどうだったのか見ていきます。
第1回 | 第2回 | 第3回 | 第4回 | 第5回 | 第6回 | |
対象 | 機関 | 機関 | 個人 | 機関 | 個人 | 個人 |
期間 | 25年 | 25年 | 25年 | 35年 | 35年 | 35年 |
発行日 | 2016/ 9/16 | 2016/ 9/30 | 2016/ 9/30 | 2021/ 2/4 | 2021/ 6/21 | 2023/ 4/28 |
当初5年 利回り | 3.00% | 3.00% | 3.00% | 3.00% | 2.75% | 4.75% |
第1回~第3回は分かれていますが、まとめて募集されています。機関投資家向けと個人向けで分かれていますが、条件は同じです。
4回と5回を比較すると、全体的に4回の条件の方が得になっていますが、機関投資家向けなので個人では購入出来ません。
第1回~3回のファーストコール(繰り上げ償還が可能な債券で最初の償還)の償還は2021年9月30日でしたが、無事に全額償還されました(ニュースリリース)。
長期債券はファーストコールで償還というのが多いですが、とは言えその判断の裁量は企業側にあるため、注意が必要です。
まとめ
この記事では「ソフトバンクグループ株式会社 第6回利払繰延条項・期限前償還条項付無担保社債(劣後特約付)」についてまとめてみました。
前回の第5回と比較すると次の様に言えます。
・条件は前回と同じ
・ただし上位債務に指定されている債券の金額が結構大きいので、返済順位は後ろの方
・利率は前回よりだいぶ上昇(2.75%→4.75%)
・第1-3回はファーストコールで償還されたが、直近のソフトバンクの業績は良くはない。
当初5年の利率は債券としては文句なしの4.5%超えですが、その後の期間についてはリスクも出てきますので、それをどうみるかで判断が分かれそうです。